『うつ病治療の基礎知識』 【自著紹介】

うつ病治療について当たり前のことが普通に書いてある本           

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【自著紹介】 うつ病治療の基礎知識 筑摩選書 加藤忠史 
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 うつ病ほど、身近にもかかわらず、捉えどころのない疾患はないのではないだろうか。
 生命を失う疾患として最大の要因が「がん」である一方、仕事ができなくなる疾患として最大の要因がおそらく「うつ」である。
 罹った人にしかわからない地獄のような苦しみに襲われるうつ病であるが、近年行われている議論は、製薬会社が抗うつ薬を売るために「うつ病は心の風邪」という標語で患者を増やした、うつ病といえば「とりあえず抗うつ薬」といった画一的な治療になってしまい、必要ない薬が多剤・大量に投与され副作用が生じている、うつ病ではない人たちが“うつ状態”の診断書で休職する“新型うつ”という社会現象が起きている…といった批判的な言説が多い。
 これらはいずれも真実を含むものであり、取り上げて検討すべき問題であることは確かである。筆者も、「うつ病の脳科学」「岐路に立つ精神医学」と、こうしたうつ病問題の現状とその対策について議論してきた。これらの議論を深めることは、もちろん意義のあることであるが、それによって、今現在、うつ病で苦しんでいる方々やその周囲の方々がすぐに救われるという訳ではないのも、また事実である。
 今回、うつ病の治療の本を書いて欲しいとのご依頼を受けた時、当初は、そのような本はたくさんあるし、何も主に双極性障害の研究に従事する筆者のような者が書かなくてもよいのではないか、と感じていた。しかし、調べてみると実は、うつ病の治療に関して、身体疾患・治療薬による副作用・双極性障害との鑑別などを含む診断の問題、多様なうつ病の分類、心理・社会的治療法および薬物療法の適応とその副作用、そして主治医の見つけ方まで、包括的に解説した新しい本は非常に少ないということがわかった。
 さまざまな言説があふれ、何をよりどころとしてよいか途方に暮れている、うつ病に苦しむ方々やその周囲の方々の水先案内となるような本になればと思い、執筆を引き受けることにした。
 そのような経緯であるため、決して何か独創的なことを言おうなどと思って書いた本ではない。『当たり前のことが普通に書いてある本』こそが、今必要な本だと思ったのである。
 筆者も委員会の一員として作成に関わってきた、日本うつ病学会の治療ガイドラインを軸に、理想的な治療とは何かをお伝えしつつ、どのようにしたら現実の治療を少しでも理想に近づけられるかについても、具体的にお伝えしたつもりである。
 本書がうつ病で悩む方々、そしてその周囲の方々のお役に少しでも立つことを祈ってやまない。
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