理研BSI-トヨタ連携センター(BTCC)公開シンポジウム

 3月9日に、理研・鈴木梅太郎記念ホールにて、理研BSI-トヨタ連携センター公開シンポジウム「BTCC3期10年の振り返りと脳科学の今後の展望」が開催された。
 BTCCは、2007年に「こころ・知能・機械系における脳科学と技術の統合」に向けて発足し、今年度で10年目を迎えた。
 このシンポジウムでは、BTCCの研究成果の報告が行われるとともに、次期計画に向けて、今後の脳科学と人工知能(AI)研究の方向性などについて、討論が行われた。
 理研BSIにいながら、これまでBTCCとはあまり接点がなかったが、今回のシンポジウムに参加して、これまで気になっていた、「AIと人類はどのように共存していくのか」という問題について、初めて回答が得られたように感じた。
 甘利俊一・理研BSI特別顧問は、被験者に、何枚かの写真の中から好きな人物を選んでもらい、こっそりすり替えて、実は本人が選んでいない選択肢を選んだと思わせてその理由を聞くと、それらしい理屈を述べるというpostdictionの実験を紹介した。
 一方、熊田孝恒ユニットリーダー(京大教授)は、90%まで機械がアシストしでも、ヒトは自分が動かした、と感じることが出来る、というデータを示した。(ちなみに、意図とは逆の方向に”アシスト”した場合は、30%でも、邪魔されたと感じる。)
 後者の実験と前者の実験を考え合わせると、ひょっとして、100%に近い自動運転でも、人は「自分が運転した」と感じることができるのかも知れない、と感じた。
 昨今、AIと人がどう協調するかが盛んに議論されており、BTCCも、人と人工物が共生する社会を目指しているとのことだが、ひょっとして理想の自動運転車は、「自動運転なのに自分で運転したと感じられる車」なのかも知れない。
そして、AIについても、人の仕事を奪うのではないか、人がAIに支配される社会が来るのではないか、といった悲観的な予想もあるが、「AIなのに、自分が考えたと感じられるAI」こそが理想のAIなのかも知れない。
 甘利先生は、意識が生まれたのは、共同生活をするためには、自分が何をしようとしているのかを相手に伝える必要があり、そのために自分が何をしようとしているのかを知る必要があったからだ、と話された。
 一方、以前、入来先生が、相手の心を読むという機能が先に生まれ、それを使って自分の心を読むようになったのが意識だ、とお話されていた。
 進化の中で、共同生活をするために人に意識が生まれたように、人との共生をするためには、AIも人の心を読むように進化する必要があるのだろう。
 人にうまくpostdictionしてもらえるように、人のpostdictionをpredictionできるように進化したAI。
 それが人とAIが協調する社会につながるのではないか。
 そんなことを感じさせるシンポジウムであった。

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